次々と成功を勝ち取る新20代

これまでの20代とは明らかに違う新世代
 ”ジェネレーションY“、あるいは”Y世代“という言葉を聞いたことはあるだろうか?

現在、10代後半から20代半ばにある人たちを指す総称だが、この世代、実は企業人事からかなり期待の眼差しを浴びている。
理由は、「総じて仕事に対し積極的。早く一人前になりたいという意識が強いんです」(金属)。二極分化しているものの、多くの人たちが仕事に貪欲な姿勢を見せるという。

また、「かつての第二新卒とは明らかに違う短期の退・転職を行うというのもひとつの特徴。自分の目指す方向によりよい転職先が見つかったら、迷わず今の職場を飛び出しますし、そうした転職のリスクをより高度なスキルを修得することでカバーしようとする。”なんとなく転職した“とか、”合わないような気がして辞めた“というケースが、意外に少ないのが特徴です」と言うのは、専門商社の営業部長。中途採用にも多く立ち会うというが、最近の20代は、これまでの20代と明らかに違う、とコメントする。 「適性がよくわからないとか、目的がはっきりしないといった人が、まず少ない。”どこでもいいから採用されたい“という人が減る一方で、”目標の業界にとにかく入り、そこから最短最速でトップを目指す“という人が増えているのを感じます。就職は、あくまで夢の扉を開くひとつのきっかけ。そこに入ったからといって成功が約束されているわけではありませんから、それほど入り口にはこだわらないという人が多いんです。これは大きな変化。採用数が狭められた中で就職活動をしてきたこともあるのでしょうが、企業に対する過剰な期待がないんです」 “ジェネレーションY”は、義務教育修了時にバブル経済が崩壊。『ニューヨークタイムズ』誌が記したこの世代に関する記事によると、日本の“ジェネレーションY”は、

「日本で経済成長を体験していない最初の世代」。

モノ余り、金余りの社会を体験しているわけでもなければ、何もかもがバラ色に見える社会を見てきたわけでもない。それどころか、社会を意識する頃には大規模リストラに震撼する父親世代の戸惑いと困惑を目の当たりにし、就職氷河期にあえぐ先輩たちを直視。すんなり就職できないのは当たり前で、“会社は一生を約束してくれるところでもなければ、安定した生活を保証してくれるところでもない”と、現実を通して教えられた。

CHECK IT OUT  “Y世代”とは何か?
米国で新たに誕生した世代の呼称。これまでの推移を見ると、1945年から’59年生まれが「ベビーブーマー」と呼ばれる世代。日本では、「団塊の世代」と名づけられ、「高度成長経済の申し子」と言われた。次が’60年から’74年生まれで、米国では「X世代」と言われている。日本の「新人類」とダブる。続く’75年以降の生まれが「Y世代」。両親ともに戦後生まれで、消費、ライフスタイルの新旗手として期待を集めている。特に日本で今注目されているのは、’80年以降に生まれたY世代。シビアな経済状況に囲まれて育ってきただけに、その行動様式や消費傾向が注目を集め、すでに成功を収めた人たちも多数登場している。

 いわば、かつての20代、あるいは大人たちが垣間見た、“幻想”を持たない世代。仕事はシビアで厳しいもので、サバイバルレースを勝ち抜かないと“勝ち組”には回れない…。そうしっかり認識しているところがある。それだけに、就職時の一喜一憂が減少。“それをどう次につなげるかが重要”とよく理解している人が多い。 「下手に大手と言われるところには入らない方がいいかもしれない、などと冷静に考える人が増えているように思います」と言うのは、ゲームソフト販売会社のマネージメント・ディレクター。「最近の新卒の動きを見ていると、有能な人がどんどん、小さいけれど高度な開発技術を持つ会社を志向し、かつてのように販売会社に人気が集中するといった傾向はなくなっている」と指摘する。 「ボクたちのような30代は、この世界に入る時にまず考えたのは、名だたる大手。ソニー、任天堂などのビッグネームから順に考えたものですが、今は必ずしもそうではない。現場の先進技術を身につけて、クリエイターとしての評価を上げる方が魅力的ということで、かなりの人が小規模プロダクションなどの門を叩くようになっているんです。これは明らかな変化。これからを勝ち抜くには、まず自分に多くの付加価値をつけなければならないということを、かなり早い時期から知っているんです」

会社をあてにしている場合ではない。どれだけ早く一人前になって、より高度な技術&スキルを修得するかが勝負。能力給制、成果主義制度などが当たり前のように導入されている中で就職活動を始めただけに、組織に対する依存度が以前と比較にならないほど低い。

これまでの20代とはどこが違う? 企業人事が見る“ジェネレーションY”
新世代に対して企業はどういう評価をしているのだろう?プラス面、マイナス面を挙げてもらった。
マイナス面
プラス面

企業への帰属意識が希薄

企業に依存し過ぎないのはいいのだが、会社を単なるステップとしかとらえていない人が目立つ。“その会社の社員だからこその仕事、信頼”という当たり前の図式がすんなり理解できない人も。

モラトリアム型が減少

 何をしたらいいのか、思い悩んだ揚げ句にふらふらしてしまうというタイプが減少。就職難を当たり前のこととして就職活動し、先輩たちの迷走ぶりを見ているだけに、時間をかせごうという人が少ない

上司の指示に懐疑的

会社への帰属意識が薄れている分、上司への態度もともすれば逸脱したものになりがちに。経験からくる言葉を軽んじて、なかなか素直に従わないといった一面を見せる。

ビジネスに対してシビア

仕事がそれほど甘いものではないということを、すでに入社当初から知っている。また、順応が遅く、成果の出ない人は勝ち残れないという現実も熟知。父親たちの悲惨さを見ているだけに、シビア。

組織のルールを無視しがち

全体責任、連帯責任といった言葉に強い抵抗感を示す。たとえそれがその場の空気を乱す行為だとしても、わりと平気で行動。年配の上司からは、独善的で短絡的だと見られやすい。

リアルな目標を持っている

早い時期から、どうすれば勝ち残れるかを考えているだけに、当初から仕事に対してリアルな目標を持っている人が多い。「この職種のこの業務」と、かなり詳細まで絞り込んで先を見ている。

年功序列を軽視する

“終身雇用・年功序列の人事制度は崩壊した”と聞いて育っているだけに、年長の人たちを軽く見過ぎ。そこにある蓄積されたキャリアの価値に目を向けないといった傾向が強い。

会社や組織に依存しない

会社に依存した結果、勤続20年、30年の人たちがどういう目にあったかを見てきた世代。その危うさには十分気づいている。過剰な期待はしないし、依存しようともしていない。

利のない人には淡白

予想以上に進んだ、極めて合理的な社会システムの中で育ったせいか、付き合っていてメリットのある人か、ない人かに敏感。ともすれば、手の平を返したような付き合い方をする。

スキル重視で退・転職

いくら会社が嫌になっても、感情的に辞める人は少なくなっている。あくまでも最低限の目標やスキルを達成。ただし、達成したら意外なところで転職に踏み出すという人も多い。

独断で処理したがる

早く一人前になって、ビッグビジネスにチャレンジしたいという気持ちが強いだけに、目先の仕事をついつい独断で判断しがち。大きな事故に発展させやすい。

新たな関係式を模索

以前勤めていた会社との人脈を、なぜか極めて良好に保っている人が多い。また、将来の独立を視野に入れてか、競合他社も含めて様々な会社とのパイプを持っている。

目に見えるスキルに頼る

資格マニアと呼ばれる人たちが多いのも特徴。目に見えるスキルを身につけることで、キャリア武装しようとする。ただし、時間をかけて熟成することが必要なキャリアに対しては消極的。

グローバルに活動

以前に比べると、明らかにグローバル化したビジネス意識を持っている。特に、米国、中国に対する興味が強く、チャンスがあればすぐにでも飛び出したいという積極性を強く持っている。

我慢せずにすぐ辞める

周囲から見れば、“もう少し頑張れば結果が出るのに”と思うところでリタイア。判断、見極めが早いのはいいのだが、時にそのタイミングを見誤る。腰を落ち着けることが苦手。

情報収集能力が高い

小・中学校からパソコンに触れてきた世代。インターネットなど、雑誌やテレビ以外での情報収集能力、分析能力に優れている。もちろん、海外の専門サイトにも自在にアクセス。

ビジネスモラルが低い

先輩社員の悪しき慣習を引き継いでいるのか、意外にビジネスモラルの低い人を目にする。“ビジネスはなんでもあり!成果を出せばいい”と思い過ぎていたり、不正事件に鈍感になっている。

打たれ強く競争力がある

就職時には、10社、20社に応募するといったことが当たり前だっただけに、社会に出た後の競争には早い段階から気づいいる。その意味では、卒業してから大きく化ける人が多い。

人を短絡的にとらえがち

自分のスキルや将来に有効な何かを持っているかどうかで人を判断。ともすれば、短絡的に見過ぎるきらいがある。ゲーム上のキャラクターではないのだから、一歩踏み込んで考えるべき。

自己投資に抵抗感がない

競争を勝ち抜くには、通り一遍のことをしているだけではダメだと覚悟。小・中学校から塾や予備校に行くのが当たり前だったことから、資格取得などの自己投資にまったく抵抗感がない。

早い時期にチャンスをものにする人が増える?
それだけではない。

幻想を抱かない世代である半面、小規模ベンチャーから始まって、またたく間に大企業へと躍進する数々の成功伝説を見て育ったのもこの世代。大企業に就職し、そこで一生勤め上げるのがステータスだった父親世代に対し、“ジェネレーションY”たちは若きビル・ゲイツに夢を馳せる。

産業構造そのものが大きく変わろうとしている時期だけに、ビッグチャンスも目白押し。そうしたチャンスに少しでも早く出合おうと、精力的なスキルアップに挑み続ける。 「たとえばトップビジネスを展開するために、今はマーケティングを身につけようとするなど、仕事の選び方やプランの立て方がかなり戦略的。きっと、彼らにとって20代、30代で起業するということはそう非現実的なことではないのでしょうし、そうしたところにこそ夢や期待があるのだと思うんです。必要なスキルとチャンスさえあれば、年齢にかかわらず大きな仕事を手にすることがきっとできる。事実、20代半ばでネット広告の会社を立ち上げ、一気に東証一部に上場するだけの企業を作り上げた成功例もあるわけですし、その気になっている人たちの鼻息はけっこう荒い。
それまでの20代にはなかった“熱”みたいなものを感じるんです」とは、化学メーカーの事業部長。こうした姿勢は、現在の企業体制にマッチする、とも付け加える。 「10年前までなら、必要なスキルや人脈を身につけるだけ身につけて、あっという間に会社を飛び出してしまうなんて、それこそとんでもないと思われていたんです。でも、今は必ずしもそうじゃない。企業内起業家という制度を設けて、アイディアと実行力のある人には会社が全面的にバックアップし、会社設立を手助けするといったところもあるほどです。そうでなくても、優秀な人材とは年齢や社歴にかかわらずに手を組んで、それぞれの事情に合った関係を構築しようといったところが急速に増えている。人を丸抱えできなくなった時代だけに、そうした動きが加速するし、その表れとしてアウトソーシングや人材派遣も恒常化しています。転職されることに目くじらを立てるというよりは、むしろそれを前提とした上でギブ・アンド・テイクの関係を作っていく。企業側の意識や態度も、こうした世代の動きにかなりマッチするようになってきているんです」 “ジェネレーションY”に対する企業の見方は上々。その評価は、決して低いものではない。 また、他の世代からは脅威に思える、といった傾向も。上司をはじめ、先輩社員にとっては必ずしも扱いやすくはない、といった意見もある。マイナス面も含めて、この世代がどう動き、どう見られているのかをあらためてリサーチ。

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