”絶対に入りたい!“ 企業大研究

変革期ならではの混沌こそがチャンス!

 就・転職の選択肢が増えている。   どちらかといえば、厳しさのみが多く語られる就・転職戦線だが、実は、ここ数年で大きく変貌。応募者側には、自分に合った会社探しや、こういう会社なら”絶対に入りたい!“と思えるような、そんな新制度を導入した会社が驚くほどの勢いで増えている。

 わかりやすい例でいえば、成果主義などはまさにそう。すっかり聞き慣れてしまって、今さらなんの新鮮さもない言葉になってしまったが、かつてはどの企業も一律に終身雇用・年功序列の人事制度を導入していたことを考えれば、それこそ激変。既存の人事制度ではとても能力を活かせない、あるいは、納得して働けないという人たちにとっては、理想的な制度が登場したことになる。
同様に、アルバイトでもその働きぶり次第で社員並み、あるいはそれ以上の厚遇を受けられるという新制度を取り入れた企業も、このところ続々登場。いわゆるフリーターと呼ばれる人たちの人気を集めたり、そこから正社員化を望む人たちの窓口になるなど、これまで考えられなかったことが、実際にあちこちで起こり始めている。 「日本は今、社会的にも産業的にも、かつてない変革期にあるわけですが、そうした変革期だからこそ、新旧入り交じった様々な試みがなされているといった状況なんです」

 そう分析するのは、銀行系シンクタンクの調査研究員。この調査研究員によると、こうした変化、変貌をうまく活用すると、これまでなかなか巡り会うことのできなかった“理想”の会社、“絶対に入りたい!”会社に巡り会える可能性がグッと増えるとのこと。マイナス面ばかりに目を向けず、そうしたプラス面にもしっかりと目を向けることが大事だという。
「確かに失業率は過去最悪ですし、有効求人倍率も以前低水準。採用枠そのものが圧倒的に狭められていて、どこに行ってもおよそリアルに感じれないほど大勢の応募者が詰めかけていると思うんです。採用1~2名に対し、30名、40名の応募者が詰めかけるのはザラ。場合によっては、50倍、60倍といったところもあるんです。しかし、だからといって、今は就・転職しにくい時期なのかというと必ずしもそうとは言い切れない。つまり、前にも言いましたが、こうした変革期であるからこその新しい窓口や、アプローチの仕方が多く出始めているんです。この変化がわかっていれば、いくらでも攻略可能。やりようによっては、好きな会社に、好きな方法でアプローチできるといっても過言ではないんです」

 耳を疑ってしまいそうなコメントだが、事実、求職者を取り巻く環境は、着実にそうした動きを見せ始めているとはっきり明言。事実、新しい形で夢を形にした就・転職者たちが多く出ていると指摘する。

DATA-CLIP マクロから見た企業動向
企業は今、大きな 転換期の中にある!

企業各社はこれからを見越して様々な方向性を模索。新たな動きを見せている。
変わる企業、変わる人材ニーズを素早くキャッチしておこう!!

<1>部門別の雇用増減見込み
企業が見せる部門別の採用意欲を探ってみると、営業、研究開発部門で積極的。生産関連の落ち込みが激しい。

資料出所/経済企画庁「平成11年度企業行動に関するアンケート調査」(2000年)

<2>採用方針(回答企業割合)
新卒、中途ともに、正社員採用が減少傾向。将来的に優秀な人材を正社員化するといった、非正社員での採用拡大が目立つ。

資料出所/日本労働研究機構「事業再構築と雇用に関する調査(企業調査)」(2002年)

<3>職業別失業率
生産業の落ち込みがそのままこうした職業別失業率にも色濃く反映。基幹産業の変化が表れている。

職業別失業率=各職業からの離職失業率(過去3年間の離職者) 各職業の就業者+各職業からの離職失業者(過去3年間の離職者)
資料出所/総務省統計局「労働力調査特別調査」より厚生労働省労働政策担当参事官室試算

【注】
1)職業別失業率は、以下の算式で求めた擬似的なもの。
2)1999~2001年の数値の平均。
3)各年2月結果。

<4>重視する技能
すでに多く指摘されている通り、企業各社は他社でも通じる職種特化型の技能をますます重視する傾向に。

<5>年俸制導入率
成果主義導入企業の急増とともに、年俸制導入企業も増加。メリット、デメリットを考えた上で選択したい。

資料出所/社会経済生産性本部「第6回日本的人事制度の変容に関する調査

夢のような成功物語が今、現実のものに!
このシンクタンク調査研究員の指摘はこうだ。
まず、窓口については、かつて正社員採用については企業側からの定期的な募集や欠員募集のための募集を待つのが常識だったが、今ではアルバイトやパート、場合によっては派遣社員からの登用も急増。以前とは比較にならないほど“正社員への道”が広くなっている。事実、顧客確保にしのぎをけずる外食フード産業などでは、アルバイトに時給1000円はおろか、成績次第で2000円、3000円を支給するといったところが増加。東京近郊の外食フードチェーン店では、なんと年収1000万円を超えるスーパー・アルバイターがついに登場し話題になった。もちろん、本人の希望で正社員化も可能。かつては考えられなかった動きのひとつとして注目される。 「これはまだ都市部に限られたことかもしれませんが、いずれ全国へと広がることは必至。企業側にとっては、いくら人件費を押さえたいとは言え、数千万円、数億円の売上げをコンスタントに上げる優秀な人材は、いくらお金をかけてでも登用したいという思惑があるわけです。アルバイトで年収1000万円というのは確かに例外的なケースかもしれませんが、大手などでも優秀な他社の技術者を、数千万円、数億円の契約金を支払って引き抜くところもあるくらい。やる気と成果さえ見せれば、たとえどんな窓口からも目的地に辿り着けるようになりつつあるというのが今の状況なんです」時給700円、800円のアルバイトからはじまって、やがては年齢にかかわらず月収数十万円をゲット。その先に、さらに店長への起用や取締役への抜擢など、まるでどこか遠くの国のサクセスストーリーのような、まず“絶対にあり得ない”とされた展開が今は現実のものとしてある。 「重要なのは、大手といわれる社員数千人規模の会社でも、こうしたことが起こり始めているということ。実際に、先頃設立された大手家電メーカーと重工業の合弁会社でも、そのトップに起用されたのは総合職採用外の社員。もともと倉庫の警備から駆け上ってきた叩き上げの社員がその実績と腕を買われて経営トップに躍り出ているんです。採用の窓口がどうで、雇用形態がどうだったかなんて、まるで無関係。要は、そこからどんな成果を挙げて、希望の仕事、希望の雇用形態をつかむかにあるんです。この時期は、特にそうした窓口、目標へのルートが様々出てきているのですから、これはもう迷うことなくアプローチ。“プロセスはどうでも、目標にたどり着けばそれでいい!”といった強い気持ちで就・転職に臨む方法もあると思うんです」また、こうした人材起用だけでなく、企業各社はそれぞれ再生を期して基幹システムの改革にも着手。意志決定のスピードを早めたいとする企業の中には、これまでの中間管理職を大幅に削減し、経営トップと現場社員がダイレクトに結ぶシステムを導入するところが後を絶たない。風通しのいい職場、成果がすぐ評価される職場を望むなら、こうした社内改革を全面に押し出した企業を選択。求人に備えればいい。
他にも、生産拠点を中国をはじめとした人件費の安い国に移管する代わり、技術開発力にこれまで以上の資本と人材を投入するという企業も続出。技術力で勝負したいという人にとっては、必ずしも逆風ではない状況になりつつある。「技術開発の分野で秀でた商品を開発した人には、多額の報奨金などで報いようというのが企業の潮流。かつては考えられなかったことが次々起こっているのでいるのですから、そうした多様性にしっかりと目を向けるべきです」
そこに見えるのは、窓口も様々なら、飛躍へのプロセスも様々な企業の動き。これからは、そうした企業動向をどう活用し、目的達成に役立てるかが、就・転職志望者にとっての大きな課題になりそうだ。
その意味でも、新しい人事制度や、システム改革に取り組む先進企業の動きには絶えずチェック。どう役立つのか考えよう。その積み重ねこそが、“絶対に入りたい!”会社に直結。サクセス・ストーリーのきっかけになる!


これが私たちの“絶対に入りたい!”会社像
経験者が語る 泥沼からの生還術
会社全体が若くて活気に満ちている
 仕事をするなら活気のある職場が一番。以前、勤務していた会社がどうしようもなく暗かったので、転職するならそうしたところだけは避けようと思っていたんです。どうせダメだろうとか、先がないといった溜息ばかりが蔓延している職場は、やはり最悪。今は競争の厳しいベンチャー系企業で働いていますが、皆で未来に打って出ているという、この感覚がたまりません。会社を大きくしていっているという実感がある。新しい会社にしてよかったと思っています。(営業・男性・28歳) )
将来へのビジョンが常に明確に示されている
 つくづく重要だなと思うのが、企業が何を目指し、どこへ行きたいのかというビジョン。この数年、というよりも、不況が叫ばれ出してからの10年来、多くの会社がそういうものをずいぶん失ってしまったように思うんです。リストラに必死で、どこへ向かうために再生しようとしているのかさえわからなくなっているような状況。その意味では、そうした混沌を抜け出して、強いリーダーシップで明確なビジョンを打ち出してくれる会社が理想。入りたいです。(営業・男性・32歳)
こんな時だからこそ社員を手厚く待遇してくれる  
 成果主義とか、年俸制といったものが次々導入されていますけど、私自身はそうしたものに懐疑的。なぜなら、営業職などのようにそうした成果がハッキリする職種は別にして、研究職や私たちのような事務職ではほとんど査定することが不可能。いたずらに社員を鼓舞して競争させ、その結果不満だらけの殺伐とした職場になるのではないかと思うんです。それよりは、こんな時期だからこそ、社員を手厚く待遇するという企業が理想。探したいと思ってます。(事務・女性・29歳)
トップとの風通しがよくて意思決定のスピードが速い
 これはすごく大事なこと。このことに気が付いていて、実際にそのための改革に着手しているところに転職したいと思っています。ボクの今いる会社は、いわゆる大手でこうした企業改革に出遅れてしまったので、なおさらそのロスを実感。いくらいい仕事をしたいと思っても、決済が下りるまでにものすごい時間がかかってしまい、競合他社にその仕事自体を持っていかれてしまうということも多いんです。これでは衰退するだけ。現場は苦しいですよね。(営業・男性・33歳)
疑いようのない評価軸。努力がそのまま活かされる
成果主義をいち早く取り入れた会社で働いているのですが、この5~6年の間に、その評価軸が二転三転。めまぐるしく変わるんです。これには本当にびっくり。事実、ひどい時などは、なぜそこまで差がつけられるのか、まるで納得できないまま1年間じっと我慢していたこともあったほどなんです。導入するならするで構いませんが、もっと納得できる明確な査定を行って欲しい。そういう揺るぎないシステムが確立されている会社が理想です。(管理・男性・31歳)

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