20代の就・転職リポート

台頭するジェネレーションY。他の世代にとっては脅威?
ジェネレーションYと呼ばれる世代が、新たな動きを見せている。

現在、50代から60代にさしかかろうとする団塊の世代の子供たち、つまり”団塊ジュニア“たちの次に来るのが、このジェネレーションY。もともとは、米国で生まれた世代名だが、日本でも少し前の20代とは明らかに違う特徴を持っているようだ。

もちろん、すべてがそうだというわけではないのだが、企業人事の見方は総じて「期待できそう」。モラトリアムばかりを繰り返し、いつになっても仕事や職場とのミスマッチを口にする世代にはない、シビアさが垣間見られるという。 「超氷河期の就・転職戦線や、リストラといった言葉に象徴されるような厳しい雇用環境を目の当たりにして育った世代。親や先輩たちがどれだけ大変な目にあったかを知っているだけに、そうした危機的状況を回避するにはどうしたらいいのか、早い時期から考えている人が多いんです」と説明するのは、機械メーカーの営業部次長。会社に対する依存心なども、少ないのが特徴的だと指摘する。 「これは、あくまでひとつの傾向ですが、”会社に一生尽くして骨を埋めよう“などという気持ちはあまりなく、むしろ吸収できるものは徹底的に吸収して、どんどんキャリアアップしていこうという意識が強い。言い換えれば、”ひとつの会社にずっと居続けることはまずないだろう“と、最初から覚悟している人たちが多いんです。親や先輩たちのように、終身雇用を約束されていたはずの人たちでも、思わぬ展開に右往左往している。そうならないためには、いつどうなっても”次“に進めるように、より高度な技術を身につけるしかない。最終的に頼れるのは自分で、会社に多くは期待できないという意識があって、会社との関係をかなりドライにとらえている人が多いんです。あくまでも、ギブ・アンド・テイク。貢献するだけでなく、自分にとっても役立つものにしたいという志向が強いんです」

そうした新世代が、今後さらに増加。次々と就・転職戦線に参加してくる。いまだに準備が整っていないという他の世代の人たちにとっては脅威。実際、どういう活動を展開しているのか、追ってみた。

Report 1
「最短最速でビジネスの ベースを作るのが目標。
そのための就・転職だと思う」 (男性・25歳)
 ネット広告の制作会社に勤務する男性・25歳は、大学を卒業して以来、すでに2回の転職を経験。さらに、社会人を対象にしたビジネス専門学校や大学の一般公開講座、異業種交流会などにも積極的に参加し、驚くほど多忙な毎日を送っている。 「自分ではそれほど忙しいと思っていないんです。今は、それこそなんとか一人前になろうと必死。成功している人たちは、皆、もっと早いスピードでキャリアを積み重ねていますから、こんなところで満足しているわけにはいかないんです。事実、ボクと同い年なのに会社を立ち上げたり、職場のナンバーワンになっている人たちが多くいる。成果主義だとか、実力本位制が多く取り入れられているおかげで、やったかやらなかったかの差が、驚くほど大きいんです。さすがに焦りますよね」

ネットを中心としたIT産業は、特に競争が激しい。高度な技術を持つ若い人材が次々登用され、競って新しいシステムを作り出す。突出した成果を挙げる人たちは、年齢に関係なく会社幹部として登用され、手厚く待遇。会社間でのヘッドハンティングも盛んで、場合によっては新会社を設立したり、会社の将来を担う人材として米国や中国などの先端市場に送り込まれることもある。

いずれも、かつてないスケール。ここまで若手社員がその能力次第で希望の仕事、待遇を勝ち取れるといった環境は従来なかった。 「それだけに、皆、必死。適性とか将来的な展開について迷っている場合ではないんです。明暗を分けるのは、20代前半でどれだけ大きな成果を挙げるか。それだけのチャンスをつかみ、信頼される社員になれるかどうかにかかっていると思うんです」

そのための転職。そのための勉強。少ない給料を投じてまで自己投資を行うのは、それがいつか役立つと確信を持っているからだ。「役立つというより、役立たせてみせるという感じ。目先はもちろん、将来的にも必要な資格を取ったり、知識を増やしているので、自分では一切無駄がないようにしているつもりです。人脈にしてもそう。積極的に様々なセミナーに参加したり、異業種交流会に出ることで、会社にいるだけでは決して得られないような人脈を作ることができるんです。1年半前に今の会社に移ったのも、それがきっかけ。異業種交流会で、たまたま講師に来ていた”ネットビジネスの寵児“と呼ばれる人に出会ったことが要因です。多いんじゃないですかね、そういう人」

”そういう人“とは、転職先の実力者やキーパーソンなどから、直接スカウトされたり、ビジネスパートナーとしての誘いを受けた人。2回、3回と転職したのも、それだけのキャリアを身につけるためだった、と説明する。 「1社目は1年半、2社目は8か月ちょっとでしたけど、必要なスキルときっかけさえつかめば、特に勤続期間を気にするということはありません。”転職する上ではマイナス“とよく聞きますが、今までのところ、そんな気配はまるでありません。自分なりに最短最速でここまで来ているつもりなんです。転職は、あくまでも手段。ゴールではないという認識です」

Report 2
「師匠に付いたら 師匠以上にはなれない。
厳しいけれどその鉄則に従う」 (女性・22歳)
 美容学校を卒業してから、すでに3店舗の店を移動。移動の激しい業界とは言われるものの、自分ではそれなりの行動基準を持って動いているつもり、ときっぱり言い切る。 「人間関係がどうだとか、仕事が思ったように進まないとか、自分には向かないような気がするなどという理由でお店を変わったことは、一度もありません。それぞれ特徴のある師匠のもとに付いて修業。何がその人を”業界トップクラス“と言わせているのか、それをつかむのが目的でお店を変えているんです」と言うのは、ヘアデザイナーの女性・22歳。最短、半年で辞めたこともあったという。理由は”この技術を学ぶために長くここに居る理由はない“と考えたから。想像していた以上にシンプルで、流行に敏感なテクニックに思えたからだった。
「はじめは何もわからずに、ただ ”すごい!“と思っていたんです。でも、いろいろなことがわかってくると、少しずつ小手先の技とそうじゃない技の違いがわかってくる。 ”ああ、これはコツさえつかめば、それほどの熟練はいらないな“と、3か月くらいで思うようになったんです。実際、閉店後の練習でうまくできるようになりましたし、先輩たちはもちろん、先生からも先輩たちはもちろん、先生からも直々に”器用にできるね“と誉められました。早く次のステップに踏み出さなければという感じだったんです」目標とするヘアデザイナー像は、かなり明確。それだけに、遠回りをすることや無駄な修業に時間を費やすことを、何より嫌う。 「成功している人たちは、本当にあっという間にトップに上り詰めるんです。必要な技術を次々盗んでは、ある日突然、新しいスタイルを確立する。アーティストと呼ばれるようになるんです」そのアーティストこそが目標。名だたる”先生“に付いても、その先生の影で生きようとは思わないし、そこからたたき上げて世に出る順番を待とうとも思わない。 「よく、言われるんですよね。”師匠に付いてしまうと、その師匠以上にはなれない“って。人によって考え方は違うんでしょうけれど、今、この時期に、いくら周囲から ”あまり短期間でお店を変わるのはやめた方がいいよ“と言われたところで、それに素直に従うわけにはいかないんです。だって、そうした一般論が私の将来を保証してくれるわけではありませんし、こと、高度で多様なテクニックの習得という意味では、マイナスに働くことが多い。5年後に帳尻が合えばいいつもりで、今はいろいろな先生について、技術やお店の運営方法、仕事の仕方などを学びたいんです。それが、今、私がここにこうしている意味。田舎から上京して、カツカツの生活を送りながら、青山のお店で働いている理由なんです」表に看板を出すことなく、一般のマンションの一室を借りて会員の人のみのヘア&メイクを受け持つという仕事の仕方があることも、はじめて学んだ。成功さえ収めれば、あらゆる展開が可能。夢は膨らむばかりだ。 「話を聞くと、どのアーティストも、皆、スタート地点は多かれ少なかれ苦労しているんです。苦労しながら腕を磨き、作品としてのヘアスタイルを世に出すための努力をしている。お店にずっと居続けるためだけの努力をするとか、雰囲気のいいお店ばかりを追いかけて、そのうちそれが目標になってしまうような人などいないというのが実際なんです。日々、明確になっていく夢に近づくための転職。それが私の絶対条件になっているんです」

Report 3
「目標は起業すること。 スーパーサラリーマンが多い今、
不可能なことではないと思う」(男性・24歳)
 最終目標は、起業すること。  そう言い切る男性・24歳は、ここまで2回の転職を経験している。今度が3度目。あえて、積極的に中国市場に乗り出す電機メーカーに応募した。 「今、中国でのビジネス体験を持つことは、近い将来、必ず役に立つと思うんです。中国は爆発的な経済成長を遂げながら、まだまだ開拓の余地を残した国。ビジネスチャンスは山ほどあると言われています。ボクの目標は、そうした中国でビジネスを展開すること。分野は問いませんが、巨大市場で会社を立ち上げてみたいんです」 IT業界やバイオ産業など、国内でもこれからの日本の牽引役になると目される産業はたくさんある。チャンスも目白押し。起業のチャンスには事欠かない。それなのに、あえて中国。今、このタイミングだからこそ、いち早くその市場を体感したいという。 「起業家を目指そうと思ったのは高校生の時。ニュー・ベンチャーと言われる人たちが、新しい会社を成功させるのを見てからです。すごいと思ったのは、皆、社長とかパイオニアと言われるには、まだかなり若いということ。”えっ、こんな若さとキャリアで成功したの?“と思われるような人たちが、続々とビジネスを立ち上げ、脚光を浴びていたんです。中にはアイディアとネットワークでニッチビジネス(隙間商売)を成功させる主婦なども登場して、起業自体がそれほど夢のような話ではなくなった。以来、大学で経済を専攻して、マーケティングやグローバル経済について研究しながら、どうしたら起業家として成功できるかを調べてきたんです」

結論が、中国。まだ市場のすみ分けが済んでいない巨大市場にこそ、大きなチャンスがあると考えた。 「もう、すみ分けられた後に入っていってもダメ。特に、個人での参入などほとんど不可能に近くなると思うんです。でも、今の段階で中国ビジネスの展開の仕方やコツを覚え、パイプを作っておけば、もしかしたら意外に早く突破口がつかめるかもしれません。少なくとも、日本で温めているビジネスアイディアが、実際にどこまで実現可能かといったことの感触くらいはつかめるはず。それだけでも、今すぐ行ってみる価値はあると思うんです」  事実、勘のいいビジネスマン、同年代の”やり手“たちは、次々と中国に進出。そのマーケットにビジネスチャンスを見いだそうとしている。

仕事や職種は、不問。ただ、これから入る会社では、電子機器の販売を通して、流通のノウハウ、売り方、市場への食い込み方を学びたい、と目を輝かせる。 「キーパーソンや窓口がどこで、それを押さえるにはどうしたらいいのかといった、具体的なことがまるでわかりません。まず、それを押さえることが先決。そのための転職ですし、会社へのアプローチだったんです」

早ければ、採用後すぐに中国の支社に配属される予定。それを前提に活動し、交渉した。 「中国語ですか?勉強中です。でも、もう2年になるんです、外国語学校に通って勉強し始めてから」

 準備に怠りはない、と言い切る。明確な目標を持ち始めた20代に注目。
迷いのないジェネレーションYが世界を変える?

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