中途採用で求められる計数管理能力とは?

中途採用で求められる計数管理能力とは?
計数管理能力という言葉をよく聞く。

特に、20代半ばから30代の中途採用について、多くの採用担当者がこの能力の必要性を指摘。採用の絶対条件として挙げるケースが少なくない。

計算された数値、あるいは企業活動に関する重要な数値。これを理解できることが採用の条件というのだ。

即戦力の採用に立ち会う繊維メーカーの営業部次長に聞いてみると、次のような答えが返ってくる。 「難しいことではないんです。ただ、ビジネスの習慣として、取引や説得をする際に、どれだけ具体的な数値を頭に入れて臨んでいるか、あるいは、それを実際に用いながら交渉しているかということなんです。たとえば、よくある事例として、取引先から商品を”5%値引きしてくれないか?“と言われたとします。この場合、感覚として”5%くらいならなんとかなる“と思うか、コスト構造をよく理解した上で”5%がボーダー“と思うのかでは、まるで違う。前者の”感覚としての5%“には、採算に関する配慮がまるでないんです。実は、提案した数値自体がギリギリのラインで、3%引きだと利益が消滅、5%引きでは採算割れを起こしているかもしれないのです。計数管理のできない人は、そうした点をキチンと計算することなく5%引きに応じてしまう。これでは、いくら売上を上げたところで、企業全体の収益には結びつかないというわけです」  ここ数年、企業はデフレスパイラルに陥りながら、採算割れを起こしかねないほどの低価格競争に明け暮れてきた。売れないよりは、売った方がマシ。せめて大量の在庫を抱えないよう、赤字覚悟で取引をするということが日常茶飯事のように繰り返されてきた。

KEY WORD
「計数管理」とは何か?
計数とは計算された数のことだが、一般的にビジネスの場面では、原価計算・人件費計算・損益分岐点計算など、数々の数理統計の手法を用いて算出した数値を指す。また、計数管理とは、こうした数値をもとに企業の経営活動をとらえ、合理的な経営管理を行うこと。目先の業務について言えば、様々な数値をもとに現状を把握し、その対策を考えることにほかならない。ビジネスを進める上で必要な計数をどれくらい押さえているか、企業の多くはこの点に注目。実際の商談や取引の際にも、この計数こそが最も信頼できるデータとしてやり取りされる。必要不可欠な知識なので、確実にインプットしておくことだ。

しかし、景気が底を打ち、企業の再生&再編が進むうちに、そうした利のない価格競争は急速に消滅。代わって、高収益体質に生まれ変わった企業の逆襲が始まりつつある。 「徹底したリストラと業務のシステム化、アウトソーシング化によって、企業の多くは以前と比較にならないくらいの高収益体質になっている。原価計算ができないようでは話にならないし、ましてやコスト構造がよく理解できないまま営業に飛び出す社員など、危なくてとても使えないんです。その意味での計数管理能力。なくてはならない能力として、必ずチェックするようにしています」

会社経営の視点から業務を見直せるように!
 また、この計数管理能力について、リース会社の人事担当マネージャーは、「一口に計数管理能力といっても、求められているのは“読める”能力と“作れる”能力のふたつ。20代半ばから30代にかけては、職種を問わず、両方そろっていることが採用の重要なポイントとなります」とコメント。その詳細を説明する。 「まず、“読む”ことについては、会社の財務諸表を読み解く程度の能力が必要。この分野は苦手な人が多いのですが、これからの就・転職を目指すのであれば、必要不可欠の知識になってきますのでなんとか克服することをお勧めします。財務諸表が分かる、読めるというだけで、人事の評価はぐんと上がる。おそらく、どの職場でも“さすがにしっかりとキャリアを積んできたきたプロフェショナル”と、すぐに受け入れられると思います」

財務諸表とは、会社の経営状態を克明に記した会計データ。これが理解できるということは、自分たちがどういった立場に置かれていて、どういった目標を達成しなければならないかがすぐに分かるということだ。 それだけではない。

そこに至るプロセスも自ずとはっきり違ってくる。こうした数値が理解できている人は、削減すべきところを削減して目標を達成。悪くても必要最低限の成果を挙げるが、財務諸表を読み込む力のない人は、表面的な金額ばかりを意識して、それを達成するためのコスト管理がうまくできない。

結果として、成果を挙げたにもかかわらず、上司から苦情を言われることになる。 「よくある話ですが、あるプロジェクトをスタートさせる時、まとめ役のマネージャーに戦力不足を訴える人がいます。“どうしても、もうひとりスタッフが必要”とか、“この期間内にはできない”と、大枠から問題提起してくるのですが、こうした人たちは、一見正論を言っているように見えて、実は経営実態から業務を見るという視点が欠けている。人件費、固定費など、いくらかかるか計算せずに理想の戦力が欲しいといっているわけです。これでは、本来、得られる企業収益を圧迫するだけ。ビジネスマン&ウーマンとしては失格なんです」

ある程度のキャリアを積んできたら、経理の知識は絶対に必要。最低でも、30歳までには財務諸表を“読める”ようになっておくべきと指摘する。

さらに、“作れる”ことも必要。ここ数年、社員研修などで経営モデルのシュミレーションゲームを行わせる会社が増えているが、これなどは研修生一人ひとりに損益計算書や賃貸対照表の作成ノウハウを身につけて欲しいからに他ならない。

業務に当たる際、こうしたノウハウを持っていれば自らマネージメントできるし、会社という大きな組織の中で、自分がどう機能しているのか、また機能しなければならないのかが数値を通して見えてくる。結果的に、目標を見失ったり、上司や会社の評価が気になるといった不安から開放される。経営者側と同じ視点で業務をとらえているため、自信を持って業務に取り組むことができるのだ。 「そうしたメリットが一番大きいと思うんです。ビジネスに関する計数管理が扱えるようになってくると、同じ業務が今までとまったく違って見えてきます。なぜ会社の経営陣や部長、上司たちが、たかだか3%や5%の売上ダウンで目くじらを立てるのか、よく分かるようになる。自ら計算し、金額にすることで、それがどのくらいの損失になるのか、あらためて分かるんです」

では、こうした計数管理能力は、どうやってチェックされるのか?その実際を、採用担当者たちは次のように説明する。

面接時の質問でもシビアにチェック!
  「ビジネス環境などを質問する際、どれくらい数値をもって説明するのかチェックします。たとえば、業界の将来について聞くときに、“この市場はどれくらいの規模に発展すると考えていますか?”など、日頃から専門誌や業界紙に目を通していなければ抑えられない数値をたずねてみたり、扱う製品のコスト構造について“利益率を上げるためには、どういう工夫が必要だと思いますか?”といった質問をしたりする。数値を交えて回答できれば合格です」(食品) 「よく聞くのは、有効求人倍率や失業率。“今、有効求人倍率はどれくらいになっているんですかね?”などと聞いた時、すぐに“0.67倍程度と聞いてます”と答えられたら有望。少なくとも、自分が置かれている状況を数値的に理解しようとしていることになります。ビジネスマンとしての意識が身についていると判断します」(商社)

「トーク・ディスカッションしてもらう際、どれくらい情緒的な発言や一般論で片付けないかに注目。最新の数値を引き出して、相手や我々を説得しようとするかをチェックしています。業界のヒット商品の実売数や価格、企業収益などをすらすら言えるのが理想。採用に限りなく近づきます」(精密)

これを機に、意識してマスター。計数管理に強くなろう。


CHECK IT UP! 計数管理能力をチェック!~1「YES」が15個以上で合格ライン
 下記の質問に、「YES」「NO」で答えてみよう。「YES」ならチェック。15個以上が合格ラインだ。10個以上で“意識して努力することが必要”。9個以下という人は、この計数管理能力不足が“うまくいかない”原因になっている可能性が強い。一から勉強してみることだ。
 基本的に数字には強い方だと思う  昇給時には所得税・住民税増税分に目がいく
 会社の売上目標をすぐに言える  自分の可処分所得をほぼ正確に把握している
 今日の為替レートが何円台か答えられる  ニュースで押さえるのはまず数字だ
  日経平均株価は基本的に押さえている  失業率の算出の仕方を知っている
 会議などでは数値を基本に説得、交渉する  有効求人倍率の算出の仕方を知っている
 自分の銀行口座の残額を正確に言える   売り掛け、売り上げの違いを説明できる
 生命保険の損得をすぐに見分けられる   常に給与に見合った売上目標を設定している
 人の「殿様商売」ぶりが何かと目につく  簡単な家計簿、小遣い帳をつけている
 表計算ソフトを様々な形で活用している  利用している各種ローンの金利を言える
 会社の今期決算を数値で説明できる   公定歩合の意味と数値を答えられる

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